家族と一緒に育つ家。
自然素材たっぷりの「100年住める」家。
高崎駅から10分、タクシーを降りて見渡すと、緑あふれる丘の上に立つ家はすぐにわかりました。
青空に映える家と、かたわらに立つ樹齢150年の立派な椋、庭先に広がる緑の畑は、まるでジブリの世界に紛れ込んだかのようです。
「ホーホケキョ、ケキョケキョ」という鴬のさえずりが響く庭には、家庭菜園がありました。
「ここにはね、空心菜、ネギ、玉ねぎ、牛蒡、トマト、レタス、スイカ、大根、白菜、つるむらさきが植わっているんだよ」と元気な子ども達がひとつひとつ教えてくれました。
「庭の野菜はもちろん、夏ミカンやいちごも全部自然栽培なのですよ」とご主人。
玄関を開けるとすぐに手洗い場があります。新しい生活様式に変わり、帰宅後すぐに手を洗う習慣となったのでとても便利そうです。
木の香りがする機能的なキッチンと、広々したリビングダイニングから見上げると、吹抜けになっていてとても開放的です。
階段を上がると大人の部屋と子どもの部屋があります。「次男、三男は畳の部屋がいいってリクエストがあって」とご主人。
子ども達ひとりひとりのリクエストを叶えた部屋作りは、とても豊かで贅沢です。「こちらの長男の部屋にはもうすぐ机が来ます」。
部屋の窓のから外を眺めると「街が見渡せて、見晴らしがいいんです」とご主人。
実は…とご主人が話して下さいました。
「長男がアレルギー系の病気で2週間入院したんです。それを機に、農薬を使っていない食事に変え、住む場所も、住む家も考えなければと思ったんです」。
「そこで、理想的な土地を探して、自然素材の家を建ててくれる工務店さんを求めて10店舗ほど足を運び、理想的な家を建ててくれそうな工務店さんに出会うことができました。工務店さんが実際に建てたお宅にお邪魔させて頂いて、より具体的なイメージが湧きました」。
「工務店さんは決まった。さて、設計士さんはどうしようと思いながら様々な設計士さんとお話をしたのですが、中でも岸井さんは僕たちの話を熱心に聞いてくれました。僕たちが選んだ工務店さんと岸井さんがタッグを組んでくれてよかったです」と奥様と顔を見合わせます。
「子ども達は、今日岸井さんが来て打合せするよというと「学校休む!」って(笑)。一緒にゲームをしたり、ご飯を食べたり、岸井さんにすっかり懐いていましたね」と奥様。
「岸井さんはとても話しやすかったですし、私たちの希望をうまく引き出してくれました。
素人の私たちの提案を「じゃぁ、それやってみましょう!」って一緒に家づくりを楽しんでくれた気がします。岸井さんに設計を頼んで本当によかったです。」と笑います。
「長男の病気のこともあって、建築に使われる化学物質についていっぱい勉強しました。シックハウス症候群など家からくる病気があることも調べました。家族みんなが安心して暮らせる家にしたかったので、接着剤を使わない家、木を組んで作ってもらえる家にしたかったのです」。
Tさんがこだわったのは「自然素材を使って家を造ることでした。先ほど家内も言いましたが、接着剤を使いたくなかったので、外壁は全部土壁にして、内装は漆喰にしました。家の中にいても外にいるみたいに空気がすごくいいし、涼しいんです」と深呼吸をします。
うんうんとうなずきながら子ども達は「100年もつ家!」と言います。
「都会に住んでいた時は、足音に気を付けたり、うるさくしないように気を配ったり、大変でした。でも今は家の中でも外でも思いっきり遊べるし、子ども達はとてものびのびしています」とご主人。
子ども達も新しい家が楽しみだったようで「この家は静かだし木の中にいるみたいだから最高だよ。畑もあるし、湧き水で泥遊びもできるし。学校はちょっと遠くなったけどね(笑)」と笑います。
庭で採れたばかりの大量の玉ねぎを、できたばかりの新しいウッドデッキに広げて土を落とし、棒に吊るしていく…。
この農作業を誰よりも楽しんでいる子ども達の背中は頼もしく、この家と共に育ち続ける姿が目に浮かぶようでした。
聞き手:松山拓也 文章:横山みほ(株)マツヤマ・デザイン